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「では、これで完了ですので。どうもありがとうございましたー!」

「はい、どうも。ありがとうございました」

その恰幅のいい作業員は私がサインをした書類を受け取ると、にこやかにそう言い残して階段を降り、玄関を出て行った。最後に扉を閉める時、彼はドアノブを捻ってドアを閉め、ガチャリという音が立たないようにしていた。

存外に丁寧な人だ。そんなところにまで気を遣わなくてもいいのに。姿の見えなくなった彼に感心しつつ、私は玄関の鍵を閉めた。

この家はメゾネットタイプの賃貸アパートで、玄関は1階だがそこからすぐに階段が伸びていて、2階に上がるとわが家の生活スペースだ。

私は踵を返し、階段を上がった。玄関に置いている愛車の模型が私の背中を見つめていた。

階段を上がると右手の洗面所兼脱衣所スペースへ戻る。

そこにはこれまでの見慣れた洗濯機はなく、どどんとふた回りは大きいであろう新品のドラム式洗濯機が鎮座していた。見慣れない光景に違和感を覚える。自分の家のはずなのに、よく似た違う場所のような、そんな錯覚を抱いた。

「結局、かさ上げは必要なかったな」

誰にともなく呟く。支払いが楽で助かった。

私は寝室に逃げ込んでいる妻に「終わったよ」と声を掛けるため、脱衣所を後にした。

 

ドラム式洗濯機を買おうと考えたのは思わぬ臨時収入があったからだ。

特別定額給付金の10万円。世間が新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために自粛を決め込み、経済活動が停滞した。それに対して政府が一律1人10万円の給付を決めた。世の中ではその行政手続きが遅いとか、申請書が郵送されてこないとか、文句を言う人が多いようだったけれど、私はもともとマイナンバーカードを作っていたからオンライン申請で申請開始日にスムーズに申請が完了して、数日後には口座に給付金が振り込まれた。

遅いと文句を言っている人たちは、マイナンバーカードを作るのが遅かった自分自身を恨むべきだ。私と妻の分、あわせて20万円。手続きは最初から最後までスムーズだった。

ドラム式洗濯機を買おうと言ったのは妻だった。

なるほど、いい機会かもしれない。もともといつか買いたいと二人で話すことの多かったドラム式洗濯機だ。正確にはドラム式洗濯乾燥機。洗濯だけでなく乾燥まで全自動でやってくれるやつだ。

時短家電と呼ばれる、その種の家事の手間を省く家電製品の購入は、ただの消費ではなく投資の側面もある。洗濯物を干すというのは見つめ直してみるとなかなかの手間だ。今の洗濯機はこの家に越してきたときに買った海外ブランドの縦型洗濯機で、乾燥機能はない。さすがに長く使っているからか、最近少し音がうるさいと気になることが増えてきた。ひどい時には、というのは一度に洗濯する衣類の量が多くなってしまった時だが、壁を殴るようながつんがつんという大きな音がして、慌てて運転を止める事もあるくらいだ。私には妻の提案を却下する理由はなかった。

いくつかの家電量販店を回り、予算の20万円と相談しつつめぼしい製品を探す。

はじめはパナソニックのキューブ型デザインの機種に惹かれた。その一台は洗濯機コーナーの中でもひときわの存在感を放っていた。端正で凹凸の少ない、整ったデザインは他のどの機種よりも美しい。ステンレスのような鈍いシルバーの筐体にヘアライン仕上げで艶消しがかかったそのデザインは実用性一辺倒になりがちな家電製品の中にあって、シンプルでミニマムな佇まいが好印象だった。また、凹凸の少なさは埃が降り積もっても拭き取りやすいなどの副次的な実用性も想像させた。

しかしそれを選ばなかったのは、某ネット掲示板があったからだ。

機種選定のための情報収集として見ていた某ネット掲示板。その洗濯乾燥機総合スレッド。

『パナソニックのキューブ型のやつ買おうと思ってる』という私の書き込みに、顔も知らない誰かがくれたレス。それは『その機種はヒートポンプ式に比べて電気代がかかるし、換気しないと脱衣所が水浸しになるけど大丈夫か?』というものだった。

お金が多少掛かるくらいはそれほど気にしないが、後ろ半分については気になった。我が家の脱衣所には窓などはなく、換気能力はたかが知れている。水浸しになるというのは一体どういうことなのか。

もう少し詳しくネットで情報収集してみると、どうやらドラム式洗濯乾燥機の乾燥機能にはいくつかの方式があるらしいことが分かった。

エアコンと同じ仕組みで熱風を出す『ヒートポンプ式』。

ドラムを動かすモーターが駆動する際の熱を利用する『ヒートリサイクル式』。

そして、電熱線で熱を発する『ヒーター式』。キューブのやつはこれだ。

ざっくりとした理解だがそういう違いがあるらしい。あとはヒートポンプにヒーターを補助的に利用するハイブリッド式などもあるらしい。

どうやら『ヒーター式』は他に比べて効率が悪く電気代が倍以上もかかるうえ、熱源の温度が高いことで結露が発生し、洗濯機の周辺が水浸しになる、ということのようだった。

なるほど、それは困る。

再度、他の機種を検討する。その途中で立ち寄ったある家電量販店で、店員に声を掛けられる。

「どういったものをお探しですか」

「予算20万円で、各メーカーどんなのがあるか見に来ました」

告げると彼は意気揚々と解説を始めた。少しくたびれた風貌をしているが語り口は軽い中年だ。背中を向けた時に気付いたが彼は日立の社員であることを示すロゴ入りのジャケットを着ていた。この家電量販店の店員ではなく、ここに常駐している販促員なのだろう。

当然その解説は日立のドラム式洗濯機を推していた。彼曰く、他のメーカーと比べてフィルターが詰まりにくく手入れや修理が少なくて済むし、衣類にシワが付きにくいのだと。そういうカタログスペックに現れない部分でこだわっているのだと。

並べて見せられた2枚のシャツ。片方は日立の、もう片方は他メーカーのドラム式洗濯機で洗濯乾燥したものらしい。比べてみると、なるほどその差は歴然としていた。

どういう条件で2枚を洗い比べたのか分からない以上、ズルい方法で自社に有利に見せるプレゼンの可能性もある、ということを頭の隅に置く。

それでも日立の良さはとりあえずよく分かった。見た目は目立つところがなく、宣伝の印象もあまりない地味っぷりだが、製品自体はこだわりが詰まっているようだ。技術者集団にはありがちなことかもしれない。もったいないことだ。しかしそんな愚直な姿勢には好感を抱く。

彼が提示した金額は21万円だった。これに追加で設置費や現在の洗濯機の引き取り料で合わせて1万円ほどがかかるが、その分はこの店のポイントで2万円還元する、会計を分けてそこから出すことができる、という話だった。

いったん保留し、別の店も見て回ることにする。

「日立の洗濯機、良さそうだったね」

移動の車内で妻が言った。

「そうだね」

私も同感だった。機能的には充分よくて、あの機種に絞ってしまっても問題なさそうだ。

問題は値段――そう思いつつ、次の家電量販店へ向けて私は車を走らせた。

そうして辿り着いたとある店舗。そこで先程と同じ機種を見ていると、例によって店員に話しかけられる。

「洗濯機をお探しですか」

どうやら彼はメーカー所属ではなく、この店舗の店員のようだ。30歳代後半から40歳代前半くらいだろうか、周囲の店員と比べても比較的若く見える。背が高くて、固めて上げた前髪が印象的だった。はきはきした様子で、いかにも軽々と仕事をこなしそうなタイプだ。

「この機種が気になっているんです」

正直にそう告げる。掲示されている値札の数字は、確か21万5千円とかそのくらいだったと思う。特別セールの文字がでかでかと踊っていた。

そこから、洗剤の自動投入機能の要否や今の洗濯機のサイズなど、いくつかの話を経て、ついに値段交渉になる。

正直に言って私は値段交渉が苦手だ。値切るという行為そのものもさることながら『この値段がついているということは値段なりの価値のある製品なんだろう。価値のあるものにはそれ相応の、適切な料金を払わなければ』と思ってしまうのだった。

店にとっては行儀のいい客かもしれないが、いち消費者としては決して賢くない。

そういうわけでわが家では値段交渉はもっぱら妻の担当だ。私が今乗っている車を買ったときも、言い値で購入しようとする私を押さえて慌てて妻が値段交渉に入ったのだった。

店員と妻、どちらの話術も巧みだ。店員は特別セールの値札の下に隠れた本来の価格である32万円と言う数字を見せてから、18万9,800円の価格を提示した。もちろん普段から32万円よりは安く売っているのだろうが、それでも先ほどの店と比べても充分な安値だ。

「この9,800円がなくなるとキリがいいんだけどなぁ~」

妻が持って回った口調でさらに値切る。

店員は一瞬ぴたりと動きを止めたが『この客はうちで買ってくれる』と判断したのだろう、すぐに「ちょっと待っててくださいね」と言い残すと、どこかに姿を消した。

彼が次に戻ってきたとき、提示した価格は18万円ちょうどだった。

この価格なら文句はない。先程の店よりもかなり安いではないか。予算の20万円にも収まる。

「ここに設置料と今お使いの洗濯機の引き取り料がかかるんですが」

彼が値段の説明を続ける。

「せっかくキリがよくなったのにって言われると思いまして、この料金ももう入れてきました! 設置料と引き取り料込みで18万円ぴったりでいいです!」

――どうやら彼は非常に良く頑張ってくれたようだ。しかもここから5%のポイント還元まであるらしい。フルプライスのゲームソフト1本分である。悩ましげで苦心しているような様子を見せつつ、その表情には顧客を購入へと導く自信がみなぎっていた。

この値段を引き出した妻の値段交渉スキルに感嘆せずにはいられない。さすが両親が関西出身なだけある。妻自身は生まれも育ちも静岡県のはずだが。

こうして、わが家はドラム式洗濯機を迎えることになった。

そこからの話はトントン拍子で進み、設置のための下見と実際の搬入の仮予約を済ませた。たまたまタイミングがよかったため、翌日すぐに下見、搬入は1週間後というスピード納品の計画となった。

 

事前に電話で連絡があったとおりの時間に作業員は現れた。玄関の扉を開けると恰幅のいい作業着の中年男性が立っていた。見るからに現場職といった風貌だ。まだ初夏にもかかわらず浅黒い肌にビール腹を抱えているが、弛んだ印象よりは逞しさめいたものが強い。

「■■■配送センターです。洗濯機設置の下見に参りました!」

「どうも。どうぞこちらです」

彼を迎え入れる。妻はこういう来客があるときは気まずいのか、寝室に逃げ込むので、対応は私の役割だ。

彼はひとまわり周囲を見回すと、足早に階段を駆け上がる。私が脱衣所のある右を示すとそちらに歩みを進め、古い洗濯機が置かれている場所を見つけると、どこからともなく取り出したメジャーで各所の計測を始めた。

10秒くらいの短い時間で計測が終わる。

「これなら搬入は大丈夫ですので!」

彼はにこやかにそう告げた。

「えっ、もう終わったんですか」

私は当惑した。玄関の狭くなっているところも、階段の90度曲がるところも、脱衣所手前でトイレのドアノブが飛び出ているところさえも計測していないのだ。特にトイレのドアノブについては寸法ギリギリではないかと心配していた。

「はい、大丈夫です!」

プロの目測、ということだろうか。自信満々という目をしていた。

「当日作業してみないと分からないんですが、場合によっては洗濯機の台にかさ上げ用のパーツが必要になります。その場合は1,890円が別でかかります」

それだけ告げると、彼はそのまますぐに帰って行った。

「すごい。あんなに大きいトラックで来たんだね」

窓から外を見下ろして妻が言った。

 

ボタンを押すとチープなメロディが流れてドラムが動き出した。ビール腹の作業員が相棒らしき坊主頭の作業員と共同で搬入した洗濯機は、ピタリと台に収まっている。

古い洗濯機なら『ヴゥゥン! ヴゥゥン!』と勢いよく回転して騒音を立てるところだが、新しい洗濯機は無音で回り出した。

その静けさに驚いてしまう。

「あれっ、これ動いてる?」

私がそう言うと妻が本体正面のガラス蓋を覗き込む。スモークガラスだがよく見ると中が見える。

「ちゃんと動いてるよ、ほら」

「本当だ」

二人、洗濯機の前で三角座りしてその様子を眺める。

「最近の洗濯機は静かなんだねぇ」

「ね」

説明書によると洗濯から乾燥まで、全ての工程で2時間45分だそうだ。今が昼下がりだから、夕方のうちには終わるだろう。

3時間近く、ずっと三角座りしているわけにもいかないので、リビングに戻る。脱衣所の扉を閉めると駆動音は完全に聞こえなくなった。

この静けさなら壁の薄い集合住宅にもいいかもしれない。そんなことを考えながらコーヒーを淹れた。外の道を車が走る音が、やけに大きく聞こえた。

30分ほど経っただろうか。

あまりに静かだからちゃんと動いてるか心配になってきた。

「あいつサボってないかな」

様子を見に向かう。背中越しに妻の「サボってないよ」と言う声が届く。

脱衣所の扉を開けると、洗濯機は確かに動いていた。目を凝らしてガラス蓋を覗き込むと、中で洗濯物がぐるぐると回っていた。

――縦型の洗濯機は回転のエネルギーで中身を攪拌しないといけないが、ドラム式は攪拌の半分を重力がやってくれる。あまり勢いをつけなくてもいいから、これだけ音が静かにできるのだろう。

洗濯機は乾燥モードに入っていた。ガラス蓋に触れると淹れたてのコーヒーを注いだカップのように温かい。私はおとなしく待つことにしてリビングに戻った。

それからどのくらいの時間が経っただろう。ピロピロと鳴った音で乾燥が終わったことを知る。早速ガラス蓋を開けて中身を取り出してみると、天日干しのような温かさになった衣類が出てくる。暖かさだけじゃない。手触りもとてもふかふかしている。思わず頬擦りしたくなるような柔らかさに仕上がっている。

このふかふかは下手したら天日干し以上だ。洗濯物を外に干す理由がなくなってしまう。ドラム式恐るべし。いや、日立恐るべしなのか。

取り出した洗濯物はその場で洗濯機の上の平らな面を利用して畳んだ。自然な流れで行ったことだったが、ドラム式洗濯機の上の面が平らだと生活導線的がスムーズだと気付く。考えてみればそういうデザインが多い気がする。

そうして、あっけなく洗濯と乾燥、洗濯物を畳むまでが終わる。

あまりにあっけなさすぎて拍子抜けするくらいだ。これまで2日に1回、全て自分の手であれだけの洗濯物を干したり取り込んだりする手間は一体なんだったのか。

洗濯という家事のもつ手間のかかる部分のうち、相当の部分が自動化され、簡略化されている。洗濯機がドラム式になるだけでこうも違うものなのか。

「こうなるとなんでもっと早く買ってなかったんだろうって思うよね」

私が言った。

「そうだね」

妻も同じ感想を持ったようだ。

こうして我が家はドラム式洗濯乾燥機を迎え、洗濯という家事の大部分から解放された。時短家電は投資でもある…………その言葉が真実であることは、今までであれば洗濯に使っていた時間でこうしてこのブログ記事を書く時間を捻出できたことが証明している。いい買い物だったことは言うまでもない。

 

しかし同時に、我が家は新しい問題を抱えることとなった。

「こうなると次は食洗機が欲しくなるよね」

「それな」

物欲は止まるところを知らない。ドラム式洗濯機の次は食洗機、食洗機の次はルンバだ。

コロナ騒ぎがもっと長引いてくれれば、2回目の10万円があったかもしれないのに…………そう思わずにはいられないのだった。

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