こんにちは、あきほ(@arkeninger)です。

今回は前回に続き、車の試乗レポートです。

今乗っている車はマツダのアテンザというセダンです。

とても気に入っていますが、そろそろ10万キロを迎えることもあり、数年以内に買い替えのタイミングが来そうです。その候補車検討です。

アテンザを購入した頃よりは予算も大きく取れますし、次はプレミアムな車がいいなという思いもあり、今回はレクサスのESを見てきました。

アテンザ、そして前回試乗したメルセデスベンツCクラス(W206)が基準になってしまいますが、いちユーザーの素直な感想を書いておきます。

(なお、特に写真を撮っては来なかったので、本記事に掲載する写真は特別な記載がない限り公式サイトからの引用です)

見てきたのはレクサスESの2023年マイナーチェンジモデル、グレードはバージョンLです。

エクステリアの特徴などについては他の方のブログやYoutubeをご覧になってください。

実物を間近で見てまず思ったのは、低く構えているということです。

今乗っているアテンザは地味に最低地上高が160mmとセダンにしては高めだったりするので、それと比べてしまうと……というところはあるのですが、並んでみると明らかにESの方が全高が低いです。それでいて全長・全幅はアテンザより大きいので、なおさら低く構えているという印象が強まります。

運転席に乗り込みます。

まず感じたのは、高さ方向に狭いということ。

ESはアテンザと同じ大柄のFFセダンです。パッケージ効率はそもそも良く、車内の広さはかなりのものです。しかもアテンザより車体が一回り大きいので、アテンザ以上に広々とした空間をイメージしていました。

実際、前後方向や左右方向には充分広いスペースがあり、ゆったりしています。

ただし、高さ方向だけは事情が違っていました。

前述の通り低く構えているため天井が低いうえ、床面がアテンザよりも高いので、高さ方向にだけはやや窮屈さを感じます。

個人的には特に床面の高さが気になりました。

結果的に、ドライビングポジションを取った時、アテンザでは頭の上にげんこつ1.5個分くらいのスペースがあるのですが、ESでは手のひら1枚と少し程度のスペースしかありませんでした。

頭をぶつけることはないですし、走り出してしまえばそれほど気になりませんが……「アテンザよりも大きな車」という先入観を持ってしまっていたので、ここは気になってしまいました。

例えばチャイルドシートを積んで小さい子供を乗せる時、アテンザでもこれまでに何度か天井に子供の頭をぶつけて泣かれたことがあるんですが、ESではそれが起きやすそうだな、と思います。

気を取り直して、内装を見てみます。

内装はさすがの上質感です。まず目を引くのはダッシュボードからドアパネルまで伸びたウッドトリムですが、本物の木を使っているんですね、質感はとても高いです。また各所にあしらわれたメッキ類はギラつきを抑えたサテンメッキ仕上げで、モーヴという上品な色の本革は柔らかく、手触りもいいです。

特筆すべきはそれらに加えてソフトパッド、ヘアライン仕上げのチタニウムっぽい色のパネルなど、多種多様な素材を巧みに組み合わせて使っていて、にもかかわらず全てのチリがぴたりと合っていることです。ひとことで言って「仕立てがいい」という表現になろうかと思います。整っていて、調和している。総合芸術です。

内装に関しては、画像で見るよりも実物の方がより高級感があります。

ただし、高級感という意味ではメルセデスCクラスの方が上かなとも思ってしまいました。

ESは先ほど述べた通り様々な素材の組み合わせが非常に巧みですが、その中にはカチカチのプラスチックやなんの変哲もないソフトパッドも含まれています。そうしたものが目につかないと言えば嘘になります。

メルセデスCクラスでは、目につくところには安っぽい素材が来ないように配置されていたように思います。また、デザイン性の高さでもCクラスの方が上と感じます。

もうひとつ内装で残念だったのはサンルーフです。レクサスではムーンルーフと呼ぶようです。

これはパノラマになっていないので運転席のやや後方の頭上のみです。ということは当然運転席の人は視界に入らないので、開放感を得ることはできません。そのうえ、後ろの席の人にとっても、角度的に見えないんです。

大柄のFFセダンだけあって後ろの席の空間が広いので小さなサンルーフは遠いですし、頭上は天井の高さが低くスレスレなので、角度的にあまり見えないんです。誰のためについているのかよく分からないサンルーフだなという印象を受けてしまいました。

ただ、車内が明るくなるのはいいと思います。

もっと残念だったのはそのサンルーフの開閉が手動だったこと(ガラス自体は電動で動きますがカバーが手動)と、開けた時にカバーの端が断ちっぱなしで安っぽかったことです。内装全体はとても品質が高く、先ほども述べたように調和が取れていると感じるのに、ここだけその調和が取れていません。とても残念でした。

一方で、後ろの席はやはりとても快適です。広々としていますし、センターコンソールの後端部やドアパネルの仕立てにも抜かりがないと感じます。

先ほどから言っている、床面が高く天井が低いことに由来する高さ方向の窮屈感も、後ろの席では前の席ほどは感じません。

また、アームレストを引き出せば立派なコンソールがついています。

この車は後ろの席が特等席なんだな、と思わせる作りです。接待で重要人物を後ろに乗せることが多い人などにはぴったりでしょう。

ただし、後ろの席にもひとつだけ気になる点がありました。それはアームレストを引き出した時に露出するトランクスルー部。スキー板などが詰めるよう、小さな穴とそのフタだけがあるのですが、その部分と周りが質感の低いプラスチック素材で、せっかくの高品質な内装に水を差すようでした。

アームレストの豪華なコンソールは後ろの席のハイライトだと思うので、なおさら出して使いたい。するとこの低品質な部分が見えてしまう……他がよく仕立てられているだけに、余計に目につくのかもしれません。

せっかくレクサスの高品質で調和の取れた世界観に浸っていたのに、先ほどのサンルーフのカバーが安っぽいことと合わせて、興醒めしてしまうような感覚でした。

そしてトランク。

トランクスペースは思ったより狭いです。

まず前提として充分な広さはあるのですが、前述の通り低く構えているため天井が低いうえ、床面が高いので、高さ方向にあまり余裕があるわけじゃないな、という印象です。トランクに関しては明らかにアテンザの方が広いです。

また、その床面も段差というか中央が盛り上がっていて、左右が少し下がっている形状です。フラットじゃないんですね。

ESは後ろの席を倒せないので、本当に荷物はそれほど乗りません。

貨物車ではないので大きな荷物を乗せて走ることはそもそもないとは思いますが、とは言っても「いざとなったら中型の家具くらいはなんとか乗るし、何泊もする旅行でお土産を山ほど買い込んでも全然平気」みたいな使い方は厳しそうです。

というわけで、内装や使い勝手に関しては、必要充分は当然兼ね備えたうえで、良い点ももちろん多いのですが、見逃せない残念な点も散見されるといった感想を抱きました。

走り出します。

サイズ感はアテンザよりひとまわり大きいくらいなので、それほど大きさが気になる感じはしません。

ハイブリッドだけあって走り出しから加速してスピードが乗るまでもとても滑らかです。エンジンはいつかかったかわかりません。この辺り、トヨタのハイブリッドはさすがですね。

特筆すべきはその静けさです。スピードを出しても風切り音がほとんどしませんし、エンジン音やロードノイズもとても静かです。高速道路を走っていても声を張り上げることなく、難なく会話できるでしょう。ここは間違いなくメルセデスCクラスよりも静かだと思います。

乗り心地ですが、これも良好。すごく優れているというわけではありませんが、良好です。快適性はとても高く、特にアテンザと比べてピッチング(車両の前後がどったんばったんする動き)が少ないです。路面のうねりに対して大きく揺れてしまうことが少なく、巡航は特に快適だと思います。

一方で気になった点も少なからずあります。

まずは取り回しの悪さ。ディーラーの駐車スペースから転回して公道に出て行くもうそれまでで「あ、全然回らないな」という第一印象を受けました。アテンザと比べても最小回転半径が30cmも大きいんですね。駐車場での取り回しは絶望的でしょう。狭い駐車場では苦労しそうです。

続いて振動。走っている間ずっとシートやペダルがプルプルプルプルと小刻みに振動していて、落ち着きません。メルセデスCクラスではこんな振動はありませんでしたし、なんなら値段が半分のアテンザの方がこの振動をよく抑え込んでいます。運転席で1番気になったのはこの振動でした。

さらに、不整路面はあまり得意ではないようです。車体が揺さぶられる感じも、お腹にコツンコツンとくる衝撃も、アテンザよりは確かに抑えられていますが、2倍の価格差を正当化するほどではないかなと感じました。さらに言うとメルセデスCクラスの方が上手くいなせています。

走行においても総じて内装と同じ感想です。

全体的に高品質で、快適で、上質感はあるのですが、詰めが甘いというか、見逃せない残念な点があります。

動的質感がより高いのはCクラスの方かなと思いました。というか、ESに乗って改めて、マツダのアテンザは頑張ってるな……と感心します。

それからこれは別に残念な点というわけではないのですが、感じ方として、ESではあまりスピードを出して走ろうという気が起きません。

キビキビ走るとかスポーティに走るとか、アクセルを踏み込むとか、そういう気持ちがあまり湧いてきません。

ESはもっとゆったりと余裕たっぷりに走りたくなります。それがこの車の持ち味だとも思いますし、そういう運転が似合うと思います。

それゆえ、運転席に座ってステアリングを握った時に、あまりワクワクしない感じもします。「この車でどこまでも楽しく走って行きたくなる」といった高揚感が湧くのはCクラスやアテンザの方で、ESはむしろドライバーを落ち着かせてくれる車です。

そうした特性や、後ろの席が特等席というあたりも含めて、僕としては『セダンの形をしたミニバンのようだ』と感じました。

さて、レクサスといえばディーラーのサービス品質の高さもよく話題に上がりますよね。

普段は商品が高品質なら少しくらいは人間のすることなので大目に見るのですが、レクサスの場合は「サービス料が車の料金に含まれている」なんて言い方もされるくらいですから、ディーラーの応対がどうだったかも考慮するうえで重要なポイントです。

ですが今回はここも、残念な点がいくつかありました。

まず、事前にWebから市場予約をした際に連絡をくれた担当者が出てこなかったこと。そればかりか引き継ぎがきちんとされていなかったのでしょうか、ディーラーに到着して名前を伝えた時から営業マン(メールをくれたのとは違う人)が挨拶に来るまでの間、まごついているような印象を受けました。

また、ドリンクを勧められてアイスのフラットホワイト(エスプレッソとスチームミルクを合わせたコーヒー)を注文したのですが、出てきたのはホットのフラットホワイトでした。仕方ないのでそのまま飲みました。

それから同行していた妻は、商談ブースから車のもとに移動する際、営業マンが妻の歩幅に合わせてくれずにずんずん歩いて行ってしまったことが気になったようでした。

サービスの良さやホスピタリティを標榜してウリにしているレクサスだけに、これらは残念なポイントです。感動レベルのサービスとは思えませんでした。

ドリンクを持ってきてくれたお姉さんは確かに非常に恭しい態度でしたし、妻いわく期間限定のカボスジュースはとても美味しかったとのことです。

ただ、メルセデスのディーラーがこれに比べて悪かったとは全然思いません。

レクサスはとにかくサービスがいいという評判を聞いていたので期待し過ぎていたのかもしれませんが、そこまで言うならその期待を超えてきて欲しかったな、とも思います。

少なくとも僕にとって、レクサスのサービスはレクサス車を購入する決め手にはなりませんでした。

というわけで、少し厳しい内容が多くなってしましましたが、僕が感じたことを正直に書きました。

内装、走り、サービス、どれをとっても基本的には高品質であることは間違いありません。上質感はアテンザより確かに上です。快適性や静粛性はとても高レベルです。また、快適装備も充実しています。

ただ、荒っぽさや残念なポイント、不釣り合いな安っぽさも散見され、夢から醒めるような気がしてしまいます。

高級車たるべき存在であるはずのレクサス、高級車であることに意味があるはずのレクサス、ハイブランドであるはずのレクサスとして、残念だなと思ってしまいます。期待値には届きません。

価格はオプション込みでちょうど800万円。

仮に今、手元にぱっと使える800万円があるとして、ESを買うかと言われると……アテンザから買い換えはしないかな、というのが僕の結論でした。

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