先日発売されたマツダのデザインについての本、その名も『MAZDA DESIGN』を紹介します。マツダのいちファンとして、そのデザインは非常に気に入っているので、このような本が出たとTwitterで情報を見かけてすぐに注文してしまいました。

 

日経BP社から出版されているこの本、価格は2200円です。僕は中身を読み終えて、この値段は安いと思いました。

 

マツダは近年、日本の自動車メーカーの中でも特にデザインに力を入れており、その取り組みが国内外で認められブランド価値を急激に高めています。

この本ではそんなマツダの自動車デザインの解説のみならず、デザインについての考え方(デザイン哲学)や自動車以外のモノのデザイン、会社の中でどのような手法で実現したかまで解説されているほか、マツダの一連の功労者である前田育男常務のインタビューも載っています。

 目次

第1章 進化を続ける魂動デザイン

この章ではマツダが2010年に魂動デザインを掲げてから現在に至るまでの魂動デザインの変遷と今後の方向性について解説しています。

 

マツダの魂動デザインはもともと「クルマに命を与える」ことを目指しているそうです。クルマが単なる移動手段ではなく、家族や友人のように身近に感じられる”愛車”となるためには、生き物と同じく「魂」が必要だという考えから「魂動」というテーマが導き出されたこと、その柱となる重要な構成要素が「動」「凛」「艶」の3つであることが示されています。

また、その象徴的な存在がマツダのコンセプトモデル「RX-VISION」と「VISION COUPE」であると。RX-VISIONは艶、VISION COUPEは凛の要素がそれぞれ強く反映されています。

RX-VISION

VISION COUPE

 

具体的に何がどう、というのはぜひ本書を読んで確かめていただきたいのですが、RX-VISIONは発表された当初からある種エロティックなまでの美しさが話題を呼びましたし、VISION COUPEはその日本刀を思わせる鋭利な緊張感が触れるもの全てを切り刻むかのような凄みを持っていました。そう考えると、まさに艶と凛。

さらに、この章を読めばおのずと、VISION COUPEとともに発表された次期アクセラだと言われているコンセプトモデル「魁 KAI CONCEPT」が艶と凛、どちらが色濃く出ているかも分かります。

魁 KAI CONCEPT

また、魂動デザインが打ち出された2010年と現在2018年ではその解釈も変化してきています。根底にある先述の考え方は変わらないのですが、表現方法として初期は動物の動きを造形にすることを強く強調していました。例えば有名な話で、マツダの車種に共通するモチーフはメスのチーターだそうです。デミオでは背中を丸めて獲物にまさに飛びかかろうとする瞬間、アクセラでは後方に溜めた力を爆発的に解放させスタートダッシュを切る瞬間、僕の愛車でもあるアテンザでは身体を伸ばして駆け抜けて行く瞬間を表現したと言われています。

また、そのヘッドライトは生き物の瞳、その虹彩を意識していることも有名な話です。

 

しかし近年の魂動デザインはそこにさらに「日本の美意識」という概念を加え、余白、移ろい、反りといった要素を取り入れています。その結果アウトプットされたのがVISION COUPEでしょうね。

 

 

第2章 魂動デザインをカタチに

この章ではそれぞれの車種ごとに詳細なデザインの解説と、魂動デザインの変遷の中でその車種が果たした役割について解説されています。

収録車種はデミオ、アクセラ、アテンザ、CX-3、CX-5、CX-8、ロードスター、ロードスターRFの合計8車種です。

それぞれのクルマがいかにしてそのデザインになったかを知ることができます。これを読めば、あなたの愛車への愛着も倍増しますよ。 

 

 

第3章 ものづくりを飛躍させる共創

この章はマツダの会社組織としてデザインをいかに実現したかという話。デザイン部門が絵を描いても、生産部門が量産化できなければそのクルマは世の中に出ることはできません。その両方がいかにして理想を共有し、理解をすり合わせ、歩調をあわせてあの美しいクルマたちを生み出したのかが分かります。

デザイナーが他部所のメンバーにデザインの意図やそうでなければならない理由などを語り、質問を受け付けるデザインカスケードという方法についても触れられています。この章については会社員の方でしたら、普段の仕事に当てはめて考えることで参考にすることもできそうですね。

 

 

第4章 ブランドをデザインする

マツダというブランドはどういうブランドか、というブランド価値そのもののデザイン、それがブランドデザインです。マツダの場合はデザイナーがブランド価値づくりにも密接に関わっていました。僕は知らなかったのですが、例えばマツダの販売店。そこでもデザイナーと建築家が共創を行なっているというのです。建築物としての店舗のデザインですね。

目黒碑文谷店

 

建築家と自動車デザイナーのデザインに対する考えの共通点と違いが解説されていて、とても興味深く読めました。それをどのようにすり合わせたか、この店舗の建築がどのような箇所にこだわっているかを知ることができます。

 

第5章 マツダデザインのすべて

信じられないほど美しいRX-VISIONの写真も収録されています

この章はマツダの常務執行役員でデザイン・ブランドスタイル担当である前田育男氏のインタビューとなっています。これについてはぜひ原文で読んでいただきたいので、ここではあえて紹介しません。読み応えがありますよ!

 

 

マツダデザインヒストリー

事実上の第6章です。この章ではマツダの往年の車種のデザインについても解説されています。あなたが昔乗っていた思い出のクルマも収録されているかもしれません。収録車種は以下の通り。

 

1959年K360、1960年R360クーペ、1967年コスモスポーツ、1968年ファミリアロータリークーペ、1969年ルーチェロータリークーペ、1971年サバンナ、1978年RX-7、1980年5代目ファミリア、1981年3代目コスモ、1989年ロードスター、1991年3代目RX-7、1992年ユーノス500、2002年アテンザ、2005年3代目ロードスター

 

魂動以前のマツダのデザインがどのように変遷してきたのか、また、いかにして魂動にたどり着いたのかがわかる章になっています。

 

 

プロダクトデザインの世界は奥が深い

工業製品のデザインというものはブランドそのものに直結します。また、所有する喜びや使用する喜びもデザイン次第で大きく変わります。自動車のデザインというのは中でも特に求められるものがあると僕は考えています。

それは、自動車という工業製品が、ヒトの人生の中で大きな存在だから。人生の中で家に次ぐくらいの大きな買い物ですし、早くても数年、遅くて十数年は買い換えないと考えると、一生の中でそう何度も機会がある買い物でもありません。だからこそ、大好きになれる、愛着を持てる、喜びを抱けるデザインのものを求められる。

 

 

これはデザイン哲学書だ

そしてその求められるものへのマツダなりの回答が魂動デザインなのですね、マツダが魂動デザインに至ったデザインへの考え方はこの本を読めば充分すぎるほどわかりますし、その考え方には深く共感できます。

これはただのデザイン解説本ではありません。自動車のデザイン、ブランドデザイン、デザインというもの自体へ観念論や概念そのものについてもマツダなりの回答を示した、一種の哲学書だと感じます。デザインへの哲学です。

 

この本はマツダファンが楽しむためのグッズであると同時に、自動車のみならずあらゆる工業製品やそれ以外へも応用できるデザインの教科書であり、またその信念を綴った哲学書でもあります。文章自体も読みやすいですし、マツダのファンはもちろん、そうでなくても非常に興味深く読み進めることができ、読み終わる頃にはあなたもマツダのデザインのファンになっている、そういう本だと感じました。

 

(この記事の中で使用した自動車の画像はいずれもマツダ公式サイトから引用したものです)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です