「不親切」「コストカットのあらわれ」果ては「危険」。
クルマの内装において、そんな評価が下されがちなユーザーインターフェースがタッチパネルです。
特に走行中に操作することも多いエアコンなどの機能が物理ボタンからタッチ式になっていると、「余計に危ない」と言われがちです。
タッチパネルは本当に、そこまでダメなのでしょうか?
タッチパネルの操作性は「車種による」
結論から言うと、「タッチパネルが使いやすいかどうか」は車種によります。
僕が乗っているメルセデス・ベンツ Cクラスも中央に大きなディスプレイがあり、エアコン操作を含め多くの機能がタッチ式になっています。しかし個人的には、不便だと感じたことはありません。
なぜなら、このCクラスには操作性を高めるための工夫が随所に施されているからです。

「物理ボタンならブラインド操作できる」は本当?
よく言われる「物理ボタンならブラインド操作できる」という主張、実は半分しか正しくありません。
物理ボタンを操作する場合、以下のようなステップが必要です:
- ボタンの場所を探す
- 手をかざし、ボタンに触れる
- ボタンを押し込む
- 指を離す
このうち、1と2の段階では結局、目視が必要になります。つまり、物理でもタッチでも「操作を始める段階で視線が逸れる」のは同じです。
タッチパネルの優劣を分ける「フィードバック」
違いが出るのは、3と4の段階=「押したことが分かるか」です。
ここが、車種ごとの設計思想や工夫で差が出る部分です。
Cクラスでは次のようなフィードバックがあり、タッチパネルといえど全く問題ない操作感を得られています。
- 「カチッ」という操作音:触れた瞬間に鳴るので、ボタンを押せたことが分かる
- ボタンの色変化:指を置いた瞬間、ボタン全体の色が変わって「どこに触れたか」がわかる
これは、スマホでアプリアイコンを押したときにアイコンの色が変わる動きと同じです。
この2つのフィードバックにより、確認のために画面を注視しなくても、「触った=操作できた」と認識できるんです。
また、Cクラスではタッチボタンのサイズが大きめになっていて狙いやすく、誤操作しにくいというのも特筆に値します。
フィードバックがない車種は確かに危険
一方で、僕の経験上、ホンダ グレイスのエアコン操作パネルや日産 セレナの一部のボタンなどに使われていたタッチ式操作パネルは、こうした操作音やボタン全体の色変化によるフィードバックが一切ない設計だったと記憶しています。


そのため、操作が成功したかどうかを判断するには、表示が変わったことを自分の目で確認するしかなく、結果として「操作完了まで画面を注視」するため、画面を見る時間が長くなります。
また、タッチボタンそのものが小さく、狙って押さないと意図したところに指を置けないこともありました。狙って押すためには、やはりそちらを注視する必要があります。
このようなUI設計では、前方不注意に繋がるリスクが確かに存在します。
また、運転席とダッシュボードの配置バランスも、操作性に大きく影響しています。画面が遠すぎたり、角度が悪かったりすれば、どんなUIでも使いにくくなるのは言うまでもありません。
タッチパネル自体は悪者ではない
最近ではマツダの新型CX-5でも、エアコン操作が物理ボタンからタッチ式に変更されたことで、一部のユーザーから落胆の声が聞かれました。

ですが、「タッチパネルだからダメ」という一括りの評価は早計です。
本当に重要なのは、そのタッチUIがどれだけ「運転しながらの操作」に配慮して設計されているかどうかです。
だからこそ、試乗時にはぜひタッチ操作のしやすさやフィードバックを確認してみるのがおすすめです。
余談1:コストの話
ちなみに、「コストカットのために物理ボタンを減らしてタッチパネルにした」と思われがちですが、メルセデスによれば実はタッチパネルの方がコストは高いそうです。(今見つけられませんでしたが、以前読んだコラムで開発者の方がそう言っていました)
つまり、タッチ化は単なる節約ではなく、UIやデザイン、未来的な操作感とのバランスを取った選択というわけですね。
余談2:「右ハンドル」とタッチパネルの相性
なお、個人的には右ハンドル車よりも左ハンドル車のほうがよりタッチ操作に向いていると思います。
左ハンドル環境ならタッチパネルを右手で操作できますが、日本を含む右ハンドル車では、操作は左手。多くの人が右利きであることを考えると、「狙った場所に正確に触れる」ことが難しくなりやすいはずです。
こればかりは、右ハンドル環境に暮らす我々はやや割を食う形ですが、我慢するしかないですね。
コメント