今回は愛車であるメルセデス・ベンツ Cクラスセダンの点検・メンテナンスに伴い、代車としてEQAをお借りしましたので、そのインプレッションを書いてみます。
メルセデス・ベンツ EQA 250+

今回の代車はメルセデスのEVラインナップで最小の車、EQAです。250+というグレード。
Aクラスに相当するSUVですから、車格はCセグメント相当ということになります。国産車で言うと、トヨタのカローラクロスやマツダのCX-30あたりでしょうか。もちろんメルセデスということでプレミアムブランドなので、価格はそれらの2〜2.5倍くらいですが。
車の周りをぐるりと歩いてみます。

初めに感じるのは、いつも乗っているCクラスと比べてやはり小さい車だな、ということ。特に前後長はCクラスセダンと比べてかなり短いのでそう感じやすいです。
一方で全高は、SUVらしい高さがあります。
EQAにしても、内燃機関バージョンであるGLAにしても言えることなのですが、GLB/EQBというボクシーなフォルムの兄弟がいる分、こちらはやや傾斜したルーフライン、凝縮感とハリのあるボディをしています。これらの要素により、画像で見る分には少しコンパクトに見えるのですが、実写を間近で見るとしっかりしたサイズを感じます。
ちなみに全幅はCクラスが1820mmに対してEQAが1835mmと、やや大きいです。EQAが大きいというよりは、Cクラスがスリムな感じもしますが、正直見た目の印象では小さく感じるEQAの方が幅が大きいというのも意外……というかSUVらしいところを感じますね。

ホイールのデザインがなんだかすごいですね。
力強いとかスポーティというよりは、エレガントな雰囲気を纏っています。
高級感の演出法を知っている
さっそく乗り込んでみます。

車内はスターパターンのパネルとスエード調のドアパネル・シートが高級感のある空間を作っています。

このスターパターンのパネルはアンビエントライトが仕込まれていて、設定した色で星たちが光ります。メルセデスオーナーの心をくすぐる演出です。

今回の車両はスエードのトリムでしたが、レザーパッケージの入った車両ならさらにゴージャスな雰囲気になるのでしょう。
メルセデスは高級感の作り方が本当に上手だな、と感じます。最近はどの自動車メーカーも(大衆ブランドでも)内装のレベルがかなり上がってきて、上質感が向上していますが、メルセデスは「上質感」にとどまらない「高級感」をしっかり演出しています。手が触れる部分がことごとく「いい素材を使っているなあ」という満足感があります。

ただ、普段Cクラスに乗っている身からすると、EQAのメーターディスプレイ・センターディスプレイは、やや小さく感じました。もう一回り大きくしても、ダッシュボードより上に来て視界の邪魔になってしまうということはないと思います。
また、2つが一体になっているディスプレイはデザイン的には良いのですが、ステアリングに隠れてしまう部分も一定程度あるので、勿体無さも感じます。
車格への期待を上回る乗り味
走り出していきましょう。
これは普段内燃機関車に乗っている人がEVやPHEVにたまに乗る時のあるあるなんですが、エンジンがないため、アクセサリーのみONにしている状態と、走行スタンバイでPレンジに入っている状態との違いが感じにくいので、「これで走り出していいんだよな?」という妙な緊張感があります。
EVならではのスムーズネス
いざ滑り出すと、さすがの静けさ。
エンジンが唸りをあげて迫力のある音と共に加速していく、という内燃機関の常識は、EVには通用しません。エンジン音抜きで速度が乗るので、止まっている状態と走っている状態がよりシームレスにつながっているような感覚になります。
エンジンだけでなくトランスミッションの変速もないので、余計に「切り替わる」手応えに乏しく、シームレスな印象を強く感じるのかもしれません。
エンジン音の代わりに聞こえてくるのは、人工的な加速音。文字で表現すると「フォーン」という感じなんですが、SF作品で宇宙船が飛んでいる時の効果音のようです。
エンジンのようなテンションが上がる感じや刺激は感じ取りにくいのですが、浮遊感があって非日常の移動体験という感じがします。

また、メルセデスのEVでは回生ブレーキの効きを前走車との間隔や道路状況に合わせて自動で制御する機能が備わっているのですが、これがなかなか優れものです。
アクセルを踏んで出力したエネルギーを無駄にしない感じというか、アクセルを離しても行けるところまでは最大限コースティング(空走)してくれて、でも状況に合わせて自然に感じる範囲で回生ブレーキをかけてくれます。特に街中を前走車に追従して走るような場面では快適です。
アクセル・ブレーキ共に最低限の操作量で快適に走れます。アクセルを深く踏み込む場面は、想像以上に少ないです。
少しの操作で快適な加速を得て、それを一切無駄にしない。そういう設計思想が伝わってきます。
ネガを帳消しにする設計
走っていて感じるのは、重心の低さです。
バッテリー搭載位置のおかげでしょう。1610mmの全高がある車とは思えない重心の低さです。SUVのシートポジションによる高いアイポイントにも関わらず、セダンのような安定感があって不思議な感覚です。
重心の低さゆえロールも少なく、車両が横に揺さぶられる感覚がありません。以前乗ったGLC(EVではない)よりも横揺れは少ないと感じます。これもEVならではの良さなのですね。
それでいて、メルセデスらしい路面の凹凸を奥深く受け止める足回り。この組み合わせは、車格に期待する乗り心地を完全に上回ってきています。
加速感も文句ないですね。今回は高速道路は走っていませんが、下道を普通に走る分には全く不便を感じません。
考えてみれば掲げる数字も250ですからね。僕が普段乗っているディーゼルのCクラスが220ですから、それより大きな数字を掲げているわけです。
前輪駆動ですが、FFに特有の重いフロントが軽いリアを引っ張る感じもありません。よりフラットでクセがなく滑らかに感じます。前輪駆動のネガは、EVではかなり軽減されるのかもしれない、と感じました。
小さいことの魅力
そして、小さな車の良さが存分に発揮されるのが路地や細い道に入った時です。
ここは全長の短さが効いてきます。いわゆる取り回しの良さが輝いています。どこにでも安心して乗っていける、どんな道に迷い込んでも大丈夫、という感じがします。
この安心感は、小さい車だからこそ。メルセデスの旨みを存分に感じられて、しかもこれだけ「使える」車というのは、かなり魅力的と言えます。


一方で、Cクラスさすがだなあと感じるポイントもあって、それはリアアクスルステアリング(後輪操舵)による小回りの良さです。というのも、今回のEQAで曲がった時、意外なほど普段のCクラスと同じような感覚で曲がれたんです。全長が長いCクラスと短いEQAで同じ感覚ということは、それだけCクラスの小回り性能が抜きん出ているということ。小さい車に乗って改めて気付かされました。
航続距離の実際

さて、EVで最大の関心事は、やはり航続距離でしょう。
カタログ上の満充電からの走行距離は、WLTCモード で591kmとなっています。
一方で、今回の代車を預かった時の電池残量が93%で、残り航続距離の表示は384kmとなっていました。
計算上は、100%で413km程度ということになります。
やはりEVはカタログ値ほど走れませんね。昔のガソリン車のカタログ燃費のように7掛けくらいで考えると、偶然にもピッタリです。
ちなみにエアコンを普通にオートでかけながら帰宅したのですが、11kmほど走って、表示上2%の消費でした。
今回は1泊2日の代車だったので充電をしませんでしたが、普通の通勤や短距離の買い物程度の使い方であれば、1〜2週間に1度の充電で良いのではないでしょうか。
個人的には往復で500km前後の長距離ドライブを度々するので、実効航続距離413kmでは全然足りないのですが、街乗り中心の「家族の2台目」としてはかなりいいと感じます。
なお、今回の車両は走行距離が10000km程度なので、バッテリーはさほど劣化していないと考えます。5年、10年と乗ってバッテリーが劣化してきたら、もう少し航続距離が短くなるでしょう。仮に10年後に80%まで低下したとすると、実効航続距離は330km程度という計算。長距離ドライブでは不便ですが、街乗り中心であれば10年後も十分現役で使える確率が高いと言えます。
メルセデスの旨みとEVの旨み

EQA 250+は、事前のイメージ以上に良い車です。
眺めれば凝縮感のあるデザインが洗練を感じさせ、乗り込めばメルセデスの世界を存分に味わえる内装が迎えてくれます。走らせればメルセデスらしさは濃厚で、苦もなく曲がり、奥深く受け止め、矢のように直進します。
それでいて、EVであることに由来する重心の低さがもたらす安定感や、長距離ドライブをしない限りは十分な航続距離を持っています。
総じて非常に扱いやすく、優れたコンパクトSUVと言えるでしょう。
グランドツーリング向きではありませんが、一方でシティコミューターとして街中を快適に移動し、取り回しよく振る舞うなら、これほどいい車も他にないでしょう。
個人的には、事前の印象よりも乗ってみた印象の方がだいぶ良かったです。率直にいい車だと感じました。

コメント