アルファード/ヴェルファイアのデザイン深掘り|ミニバンという制約の中で、いかに「威厳」と「スタイリッシュさ」を表現したか

自動車/クルマ

僕はセダンが格好いいと思っているので、ミニバンはあまり好きではありません。

しかし、現行のアルファード・ヴェルファイアに関しては、よくできたデザインだと思っています。

先代モデルはいかにも押し出しが強い見た目で、威圧感マシマシという感じでした。

実際、Googleで検索窓に「アルファード デザイン」と入力すると、「ひどい」「ダサい」「下品」などの言葉がサジェストされます。

ただし、無条件に批判するのは無責任でしょう。

実際のところ、2024年のフルモデルチェンジでデザインが変更されたことで、最新モデルらしいスタイリッシュさと高級車としての品格がどちらも向上しています。

先代モデルから明確にジャンプアップした、良いデザインです。

今回はミニバン嫌いな僕が、それでも秀逸と言わざるを得ない、アルファード・ヴェルファイアのデザインについて深掘りしていきましょう。

トヨタ アルファード | デザイン | トヨタ自動車WEBサイト
トヨタ アルファード の公式サイト。デザイン・スタイリング(外観)や室内空間・内装などをご覧いただけます。

(なお、本記事内の画像は、特段の但し書きがない限り上記トヨタ公式Webサイトからの引用です)

ミニバンという「不利な制約」

僕がミニバンを嫌いな理由は、フォルム全体が不格好にならざるを得ないからです。

箱型であることを宿命づけられているボディタイプですから、ボテッとして、起伏や凹凸といったものも乏しいのは仕方がないです。軽トールワゴンなども同じですが、信号待ちでそうした車種の後ろにつくと、バックドアが絶壁だなあと思ってしまいます。

スポーツカーやセダンが持つような「クルマとしての高性能さ」を強調するようなデザインには、どうしたってなりようがありません。

そんな不利な制約がもともとあるミニバンのデザインは、きっとデザイナーにとっては非常に難しいのでしょうね。

しかしトヨタのデザイナーはすごいですね。新型アルファード・ヴェルファイアでは、先代のイメージを継承しつつ、最新モデルとしての説得感をしっかり持たせて、なおかつ下品なイメージを打ち消す工夫まで見られます。

先代アルファード/ヴェルファイアが選んだ「威圧感」という戦略

画像は「新着カーリース クルカ」サイトより引用

まずは先代のアルファードを見てみましょう。

メッキ装飾がこれでもかと言わんばかりに使用され、非常に押し出しが強いです。線も面も、あらゆる要素がギラギラしていて、主張が渋滞しています。

この頃のアルファード・ヴェルファイアはミニバンというカテゴリーにおける絶対王者の地位を確固たるものにしなければなりませんでしたから、まさにその押し出しの強さこそが必要だったのでしょう。

誰しもの目を引き、一番目立つ存在でなければならない。たとえそれが悪目立ちだとしても、目立たないのよりは断然いい。泣く子も黙るキングオブミニバン。そういう意図があったはずです。

結果、今のイメージ通りの、「いかつくて」「見る人を選ぶ強烈なキャラクター」のアルファード・ヴェルファイアが誕生しましたし、実際に求められてこれだけ売れたわけです。

つまり、先代アルファード・ヴェルファイアの「威圧感」は、確信犯的につくられたものだということですね。

現行モデルで起きた「威圧」から「威厳」への転換

対して、現行型を見てみましょう。

似たようなメッキ加飾はもちろんあるのですが、使い方に変化が見られます。

先代ではグリル内外の広い範囲でギラギラしたメッキを施していたのに対して、現行型のメッキはグリル内(と、両サイドのフォグランプ部の縁)のみに、綺麗に整列された形で配されています。

先代よりもかなりスッキリした印象ですよね。

メッキ自体は少なくないのに意外なほどスッキリして見えるのは、非常に整理された使い方をしているおかげでしょう。縦と横が無秩序に交わるような箇所がないからでしょう。

ヴェルファイアではそれがさらに顕著です。

控えめになった、というよりは、ミニバンの絶対王者としての地位を確立したので、それ以上威張る必要がないのでしょう。むしろ必要なのは、王としての余裕や威厳を表現すること。

ここがポイントです。

先代では「威圧感」の表現が鍵でしたが、現行では「威厳」をいかに表現するかが鍵なのです。

ディテールで見る、威厳を生むデザインの作法

例えばヘッドライト。最近のトヨタの傾向で言えば、他の車種だったら、ハンマーヘッドの意匠を取り入れているところです。つまり横にかなり長く引き伸ばして、左右をブラックパネルもしくはライトバーで繋ぐ。

しかし、アルファード・ヴェルファイアでは、あえてそれをしていないのです。

むしろ先代より1回り小さく、薄くなっている。それでいて切れ長な印象を作っているのは、突き出るように伸びたボンネット先端との合わせ技です。

ポジションランプの光り方を見ると、ヘッドライトの下が2段の破線状に光っています。ここはグリル内のメッキとの連続性を強く感じさせ、外側に向かって広がるイメージを持たせています。

これはなかなか目を引く存在感のある意匠……なのですが、発光面積で言うと、意外と大きくなかったりします。同じトヨタのプリウスやクラウンスポーツなどはもっと目立つようになっています。アルファードはそれらと比べるとやや落ち着いています。

ヴェルファイアでは左右各1本、線状に光るだけ。

その線もクルマの幅左右いっぱいに長く伸ばしてワイドなスタンスを強調するのが他の車種でのやり方ですが、ヴェルファイアではむしろ控えめな長さ。

横幅いっぱいに線を伸ばすのではなく、あえて余白を持つことで余裕を感じさせることに繋がっています。

そもそも、アルファード・ヴェルファイアのようなもともと大きなボディを持つ車では、必死にワイドさを強調しなくても実際にワイドなわけですし、十分存在感がありますからね。(身も蓋もない)

他にも上で言及した通り、メッキの使い方が整理されたことで、先代と比べて繊細で緻密・知的な印象を醸し出しています。先代の顔が下品に見えた人でも、現行型の顔を下品とは評さないのではないでしょうか。

ひとつひとつのディテールを見ても、主張しすぎている箇所がありません。全体としての統一感や馴染み方を優先した、統合的な完成度の高いデザインです。結果的に主張の強い個所が減り、秩序を感じさせます。

しかもデザインの骨格そのものは先代から変わっていないので、ただならぬ雰囲気は感じさせるんですよね。

先代アルファード・ヴェルファイアのイメージをそのまま引き継いで、ハンサムになったね? という感じ。

かつては力強さを前面に出していた人が立派な肩書を得て、ダンディズムを獲得した……いや、分かりにくいか。

ミニバンでありながらスタイリッシュに見せる理由

アルファード・ヴェルファイアのフォルムは、ミニバンとして箱型であることは確かなのですが、その実、抑揚がしっかりつけられています。

特にショルダーラインの絞り込みや突き出たボンネット先端などは、実車では写真で見る以上に凹んでいて彫りの深さを演出しており、彫刻的な立体感が強く感じられるようになっています。

さらに、ウィンドウ下端の折り返しのついたラインなども、先代を踏襲していながらもよりシャープな「張り」のある線に引き直されています。先代と比べ、緊張感やスピード感を強く感じます。

これらの要素はミニバン的な重さを巧みに逃がして、のっぺりとしがちなボディタイプでありながらも退屈を抱かせない工夫になっています。

スポーツセダン的なデザイン言語を部分的に流用しているとも捉えることができそうですね。スタイリッシュさの演出にも繋がっています。

「引き算」が許される立場──絶対王者として君臨するためのデザイン論

従来のイメージやデザインを引き継ぎながら、それを強化する方向・過剰に足していく方向ではなく、むしろ一歩下がって余裕を見せる方向・控えめにすることで高級感を演出する方向に舵を切ることで、アルファード・ヴェルファイアという「威圧感」を「威厳」に転換した。それにより、名実ともにミニバンの「王」にふさわしいクルマになった。

これが、現行モデルのデザインの凄さです。

アルファード・ヴェルファイアという車種がこれまで築いてきた、ミニバンの絶対王者という地位があるからこそ、こういうデザインができるんですよね。

流行に合わせてカタチを変えるということに始終するのではなく、表現したいものがきちんとあって、それをデザインに落とし込んでいる。そんな本質的なデザインアップデートです。

ミニバンというボディタイプが好きではない、絶対に自分では選ばないと思っている僕でも、この巧みなデザインには脱帽するしかありません。最近のトヨタのデザインは本当に見所が多いですね。

さて、ここまで磨き上げられたデザインを手にしたアルファード・ヴェルファイアオーナーなら、次に考えるべきはその「美しさの維持」ではないでしょうか。

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トヨタのデザインについては、こちらのRAV4の記事でも詳しく考察しています。タフさと洗練をどう両立させたのか、併せてご覧ください。

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